念願のルポ出版に漕ぎつけてこれまでの日々フラッシュバック
目の前に来た小ぶりなる単行本その愛おしさ我が子の如く
すぐに手にしたい感情抑えつつ装丁をただじっと見つめる
「帰ったら読ませてあげる」と約束の妻の帰りを待ちどおしく居り
ゆっくりとめくられていく自著の本ページページに思いあふれる
底冷えにふと振り向けば裏窓に描き始めの銀世界の絵
降りかかる微粒の雪が荒れ庭をガトーショコラの如く装飾
オレンジのライトきらめく昼下がりスノーマンらが涙にくれる
影広げ落ちてゆく夕日の孤独冷えと寒さが追い討ちかける
薄っすらと茜に染まる遠い空あの優しさはどこまで続く
異次元にいるかの如くただ独り在宅のまま仕事始め
在宅で働く父に子ら挨拶「いってきます」そして「ただいま」
パソコンを小指一本だけで打つその慰めは月十万円
「がんばるな、あきらめるな」と励ましのメールをくれる社長温か
窮屈な時間と場所に苦はあれど働く心地たまらなく良し
体内に「しびれ」なる名の悪が棲む其奴はもしや電気うなぎか
理由なきしびれ治らず臥す我に亡母の励まし「生きてる証拠」
年の暮れ年明けもただ繰り返す起きて寝て起き寝て起きて寝る
祖父祖母と母を失くした鳥たちの留まる木々なく正月寂し
四六時中ドタバタ子らの奇声怒号しかも我が家に精彩放つ
「真央ちゃんみたい」と五歳の弟が衣装化粧の姉に見とれる
軽やかに「かっこうワルツ」舞う美音の時折見せる笑み愛らしい
麗しきEIKO師匠のその舞いに十数年後の美音をだぶらす
とりどりの花が次々咲き誇りやがて広がる稀有の花園
バレリーナ美音よ舞台の星となれ夢に破れた父の分まで